欧米の人々は、自分たちの国は世俗的であると、考えているかもしれないが、宗教的信条や宗教アイデンティティー、宗教団体が、社会の結束または社会崩壊に今なお影響しています。ヨーロッパでは、公に宗教実践を行っている宗教団体の権利を制限するための法的規制の動きが種々の国で活発になっています。国際自由宗教連盟は、ヨーロッパの様々な国々で、現在制限されている宗教的自由を次の4つに分類しました。
(注:これらほとんどの例は、2001年に収集された報告書から抜粋したものである。)
1.法律的制限
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カルト団体リストに載っている団体に対して制限を加える法律の可決(フランス)
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登録に厳しい必要条件を課すことによって、いくつかの地域において他宗教への差別を引き起こしているロシア正教の独占(ロシア)
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特定の教会や法人格を持つ宗教団体にのみ適用される法律案。他の宗教は種々の条件を満たさなければならず、キリスト教正教会(オーソドックス)の独占。(セルビア並びにマケドニア)
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宗教団体の内政を強制的に干渉する行政監督措置に関する法律(ブルガリア)
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EU報告書によると「宗教的信条に対する不必要に制限する傾向がある」(ハンガリー)
2.最近の特定の宗教団体に対する差別の事例
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意図的に特定の条件を満たしていないとして、地裁・高裁で3年にわたり争われている救世軍。(ロシア)
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‘外国’と関係しているという理由で、ロシアのペンテコスト派(伝道主義的なキリスト教)の建物建設計画の地元の反対(ロシア)
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特に福音主義キリスト教徒やエホバの証人のような、非ロシア清教徒に対する集団暴力の激化、および政府のこうした暴力に対処する責任回避。(グルジア共和国)
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青年による小規模な宗教団体会員や施設への攻撃(セルビア)
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女性のムスリムに対するヴェール着用の禁止(トルコ)
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良心による兵役拒否の権利を認めていない。(アルメニア)
3.宗教的所有物に関する迫害
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放火犯によるオーソドックス教会への一連の攻撃並びに防衛軍によるモスクの破壊(マケドニア)
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政府の許可を得ていないことを理由に、新興宗教である「アウミズム」の像を破壊した。(フランス)
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モスクや教会が国によって所有され続けており、所有物が宗教団体に返還されていない。(ブルガリア)
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宗教的に神聖な場所の再建への様々な妨害(ボスニアとヘルツェゴビナ)
4.2001年9月11日からの影響
・問題をおこしそうだと考えられる宗教団体を解散させる権力を政府機関に与えた。(ドイツ)
・宗教間対立に刺激を与えることばを反テロリズムの広告から取り除いた(イギリス)
メルデヴィ・ダイジ著 ヨーロッパの宗教的自由と新興宗教運動
(2001年3月刊行No.2 ISKCONコミュニケーション・ジャーナル8、ISSN1358−3367)
「グローバリゼーションの結果のひとつは、私達が好むと好まざるとに関わらず、多くの異なる信仰が共存する多元社会になったことである。社会は、どのようにこの課題に対応していくべきだろうか?好ましくない信仰は、禁止すべきだろうか?もしそうだとしたならば、誰が適切な信仰かそうでない信仰か決めるのであろうか?この問題は、地球的規模で考えるべきか、それとも各国レベルで考えるべきであろうか?異なる文化、少数派並びに宗教との間の対話の役割は何であろうか?」
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